「マイクロソフトでは出逢えなかった転職(原題:Leaving Microsoft to Change the World)」の著者、John Wood に、greenz、greenTV japan、オルタナの3社で初の共同インタビューをしてきた。
マイクロソフトという大企業の役員というステータスと出世街道を捨てて、アジアの山奥の子どもたちに本を届けようー、34歳のビジネスマンにそう決意させたのは、休暇で訪れたヒマラヤ山脈の高地にある小学校で見た「本のない図書館」だった。幼いころから本を読んで世界や人生を学んできたジョンにとって、本が読みたくても、買うお金がないから本を読めない子どもがいるという目の前の現実は、信じられないことだった。
「読まなくなった本をネパールの小学校に寄付してください」と友人達に呼びかけたメールにはじまり、ジョンが立ち上げた、“Room to Read”というNGOは、「子どもの教育から世界が変わる」をミッションに、恵まれない子どもたちに本を送り、図書館を作り、学校をつくり、教育のインフラをつくるという大きなプロジェクトに成長した。Room to Readの目標は、2020年までに 1000万人の子どもたちに教育の場をつくること!、としている。実際、1999年12月の設立以来、小学校444校、図書館5000カ所、4百万冊以上を寄贈、42億ドルを寄付((以上、ジョンの言葉より)、2336人の女子児童に長期の奨学金を提供(公式サイトより)している。
ジョンが展開している事業、恵まれない貧困国に学校や図書館を作るということは、別に目新しいものではない。本著の中でジョン・ウッド自身が書いているように、そんな活動をやっている人間は、世の中にたくさんいる。ジョンの話がおもしろいのは、そのビジョンとロジックの革新性にある。
そのビジョンとは(以下、本書から抜粋)
国連の推計によると、世界で読み書きのできない人が推計8億5千万人(世界人口65億人だから8人に1人の割合)、
うち3分の2が女性。その影響は悲惨なかたちで次世代に受け継がれる。家で子どもに本を読み聞かせるのは、もっぱら女性だからだ。母親が教育を受けていれば、次の世代に受け継がれる確率がとても高い。途上国ではあまりに多くの子どもが、母親が教育を受けていないという不利益を背負って人生を始めている。
小学校に入学する年齢の子どものうち、1億人以上が学校に行っていない。これらの子どもにチャンスは二度とやってこない。1年後や10年後では遅すぎるのだ。誰かが何かをしなければ!
この数字を見て圧倒された。でも、この数字と根拠があるからこそ、ジョンは壮大なビジョンとミッションを見いだし、それを実現もしている。その達成数もスゴイけど、前述したとおり、成長のスピードもスゴイ。何故、こうも結果とスピードを重要視するのか? 本書でジョン・ウッドはこう語っている。
Room to Readを差別化するひとつの方法として、僕が考えたのは、実際の成果を報告し、新しい情報をこまめに伝えることだ。「やろうと思っていること」を話すのではなく、やってきたことを話そう。新しくできた学校の数、寄付した本の数、奨学金を受け取っている少女の数。具体的な進捗を報告できず、報告する数が増えなければ、寄付者はどうしてだろうと思い、寄付をやめる人もいるだろう。寄付をする選択肢は数え切れないほどある。彼らがRoom to Readを選ぶ理由が必要なのだ。
もし自分たちの活動が5年遅れたら、5歳の子供は10歳になってしまうんです。そうなれば、彼は学校で学ぶ機会を永遠に失ってしまうんです
この数字とスピードを重視する経営手法と行動力こそ、ジョンがマイクロソフトで培ってきた能力である。
また、発展途上国で建設された学校が数年経つと、手入れもされず放置されるというありがちなことがないよう、ジョンは、共同出資プログラム、チャレンジ・グラントを立ち上げた。それは、できるだけ1人の寄付者に依存せず、多くの人から資金を集め、地元住民からも少額でいいから資金を提供してもらう、という仕組みだ。資金がない場合、学校建設のために、セメントを運ぶとか労働力を提供することでもいい。そうすることで、誰もがそのプロジェクトの主役となって参加し、学校や図書館が完成すれば、「所有意識」をもって永続的に学校を大切にするからだ。このロジックによって、ジョンの言う、「教育に投資をすれば、世界を変えるための手助けをしているという素晴らしい気持ちを味わえる」ことが可能となり、たくさんの人がかかわることで世界は変えられる、ということを示したものである。
ジョンは言っている。
物質的な富があるかどうかは関係ない。本当に大切なのは――その富を使って何をするかだ。若くして経済的に成功したのは、大半は幸運だったからすぎない。世界を変える手助けをするために、自分の人生を少し変えてみようと思っているなら、―-考えることに時間をかけすぎず、飛び込んでみること。僕が考えたいのは、「できない理由」じゃなくて「どうすればできるか」ってこと。
そういえば、そうだった。
わたしも、自分には会社員人生より、何かもっとするべきことがある気がして、自分の人生を少し変えてみたくて、ジョンのように(ジョンほど大したポジションではなかったけど)、GEという大企業を辞めた。その時は、自分が好きな場所、つまり「海の近く」で、好きなように生きたい、と思っただけだった。だけど、そんなこと1人で実現しても、自分も周りの人も世の中もハッピーにはなれないと(当たり前だけど)気付いた。
だから、わたしの場合、自分の人生を変えようと思っていたら、いつの間にか、世界を変えるためにちょっと手助けをしていたという経緯だ。
だから、この世界に長くいるわけでもなく(何故か昔から居ると思われることが多い)、知識や経験が豊富にあるわけでもなく、まだまだひよっこだ。
でも、セヴァンもビルも言っていたけど、「1人ひとりに世界を変えるチカラがあるし、自分にできることをすればいい。そうすれば、世界はちょこっとだけいい方向に転がっていく。」
そんなわけで、本書を読んで、ジョンの言葉一つ一つを通して、1年半前に会社を辞めるときのいろいろな悩みや葛藤、そして、この世界に飛び込んだ時の自分の気持ちを思いだした。そして、ジョンと同じように、思った。
給料は激減したし、時間もない。
でも、働いている感覚、働かされている気分はしない。
だって、これは仕事ではなく、趣味みたいなものだから。
情熱をもって取り組めて、世界を変えられるかもしれないから。
僕の(私の)選んだ道は、正しかった。
本書は、自分の人生にちょっと悩んでいる人、、自分には何ができるんだろうかと思っている人、自分も何かしたいと思っている人に、オススメです。
ジョンのインタビューは、近日greenz にて公開予定。雑誌オルタナとgreen TVの映像は、年明け掲載予定です。ちなみに、この3社では、GREEN MEDIA ALLIANCEという心あるメディアのネットワークをを結成し(近日ウェブサイトオープン予定)、今後、共同取材は共同企画に取り組んで行く予定です。こちらもどうぞお楽しみに。
